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NF-κBファミリーの発現が卵巣がんの予後不良に関連

卵巣がん組織に存在する核因子(NF)-κBファミリーに属する特定の蛋白質が進行卵巣がん患者の予後不良に関連している可能性があると報告されました(Cancer(2010; オンライン版)。

NF-κBは細胞の生存や増殖、炎症、免疫応答、ストレスに対する細胞応答など多数の細胞内プロセスを調節します。とくに慢性炎症疾患では重要な因子です。NF-κBシグナリングの異常は、卵巣がんを含む数種類のがんで認められていました。しかし、卵巣がんではそうした機序と重要性は明らかにされていませんでした。

今回、新規に進行卵巣上皮がんと診断された未治療の患者さん33例から手術時に得られた腫瘍組織細胞中のNF-κB関連蛋白質の発現を調べました。卵巣上皮がん患者さんの病期(全例が進行期)、悪性度、病型は同様でした。また、全例とも標準の3剤併用化学療法を受けていました。

研究チームは卵巣腫瘍細胞におけるNF-κBファミリーと他の関連蛋白質を検出するために、免疫組織化学検査を用いて組織標本中の特異蛋白を特定しました。次いで、各蛋白質を発現している腫瘍細胞の割合と患者のアウトカムとの関連を調べました。

その結果、NF-κBファミリーの1つであるp50が4分の1超の細胞に存在し、生存率不良と関連することが判明ました。NF-κBの標的であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)9の発現が低いか、発現していないことも予後不良に関連していました。

さらに、2種類のNF-κBファミリー(p65とRelB)、および炎症促進に関与するIKKαと呼ばれる蛋白質が、同一細胞に発現する頻度も高かったという結果も得られています。

NF-κBを介した卵巣組織の慢性炎症や卵巣上皮がんを誘発した可能性が推測されます。今後、卵巣がんの新たな治療法開発としてNF-κBを介した慢性炎症の制御がターゲットとなるでしょう。


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