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米国予防医療作業部会が卵巣癌(がん)スクリーニングに否定的な勧告

卵巣癌は症状に気付いたときには手遅れであるケースことが多いため、女性の「サイレントキラー」といわれていますが、スクリーニングのための優れた検査法は現在のところ存在しません。

現在、卵巣癌の検査には腫瘍マーカーCA-125を調べる血液検査と経膣超音波検査の2つの方法が用いられています。しかし、昨年(2011年)発表された大規模研究では、血液検査と超音波検査を受けた群と「通常のケア」を受けた群の間で死亡率に有意差は認められなかったほか、スクリーニングを受けた群の約10%に偽陽性の結果がみられ、その3分の1が必要のない卵巣摘出を受けていました。

別の研究では、血液検査/超音波スクリーニングで1例の卵巣癌を診断するためには、33件の外科手術が必要であると推定されています。さらに英国で進行中の別の試験の予備的データでも、スクリーニングを受けた女性の約10%に偽陽性の結果が出ており、その半数が外科手術を受け、約4%が手術による重大な合併症を経験していることが明らかにされています。

血液検査と超音波検査による卵巣癌スクリーニングは有効ではなく、場合によっては危険であり、多額の費用を要するにもかかわらず、現状では多くの医師が女性の要求に応じて検査を行っています。医療の慣習化ですね。

今回、米国の予防医学、根拠に基づいた(evidence-based medicine)医療の専門家(プライマリーケア医)で構成される、米国政府の独立委員会である米国予防医療作業部会(USPSTF)が、平均的リスクの女性は卵巣癌(がん)スクリーニングを受けるべきでないとする2004年の勧告を更新しました。この勧告草案は、USPSTFのウェブサイト(http://www.uspreventiveservicestaskforce.org/tfcomment.htm)に掲載され、医師および公共団体や専門団体の意見が求められている。最終的な勧告は2カ月以内には発行される予定となっています。

今回発行された勧告草案によると、現在用いられている検査法はベネフィット(便益)よりも有害性が高い可能性があるとしています。さて、米国医療属国の日本でもこの勧告を真摯に受け止めるでしょうか?


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