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卵巣がん患者の化学療法反応性予測にDNA修復に関与する遺伝子発現をスコア化

卵巣がんの多くは進行期(ステージVとW)に至ってから診断されます。卵巣がん患者さんは手術で腫瘍をできる限り摘出し,その後,白金製剤ベースの化学療法を受けています。

今回、DNA修復経路のスコア化によって,進行卵巣がんにおける1次治療としての白金製剤ベースの化学療法に対する反応性を予測できる可能性があることが論文報告されました(Journal of the National Cancer Institute(2012; 104: 670-681)。

こういった試みがなされるのは、実は抗がん剤が卵巣がんには有効でないからです。化学療法はむしろ卵巣がん患者さんの生活の質が下がるだけでなく、縮命効果が認められる最悪の選択です。

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→DNA修復経路の状態により白金製剤ベースの化学療法を受けた卵巣がん患者のアウトカムを予測できると考え,がんゲノムアトラス(The Cancer Genome Atlas;TCGA)から進行卵巣がん患者の遺伝子発現データを集め,白金製剤誘発性DNA損傷修復経路に関与する遺伝子を検討し,分子スコアを開発した。卵巣がん患者を低スコアと高スコアに分類し,全生存期間(OS),無再発生存期間,無増悪生存期間に関する同スコアの予後予測能を評価した。

検討の結果,OS(中央値)は低スコアの卵巣がん患者と比べて高スコアの卵巣がん患者で有意に長かった。卵巣がん患者のスコアと完全奏効,無再発生存期間,および無増悪生存期間との間に正の相関が認められた。この結果をさらに2つの別のデータセットにより検証。このスコアを用いることで,他の臨床因子と比べてもOSをより正しく予測できることが確認された。

ワシントン大学(ワシントン州シアトル)産科婦人科学のElizabeth M. Swisher博士は同誌の付随論評(2012; 104: 642-645)で,今回のスコアの臨床応用は時期尚早と考えており,「この研究は重要な試みではあるが,妥当性の検証が不十分なバイオマーカーを臨床に応用すると,個別化治療に悪影響を及ぼす可能性がある」とコメントしている。


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